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尾行・張込みの許容範囲。犯罪発生後と前とで異なるか。

任意捜査の限界101問  渡辺咲子著 立花書房

渡辺咲子 明治学院大学法科大学院教授 元東京高等検察庁検事


第35問 尾行・張込みの許容範囲。犯罪発生後と前とで異なるか。

[関係条文]警察法2条1項、刑訴法197条1項、犯捜規範101条

一  尾行・張込みは、犯罪の予防及び捜査の方法として極めて有効な方法である。たとえば犯罪発生以前であっても、警察法2条1項に定める犯罪の予防・鎮圧という警察の責務にかんがみれば、このための監視警戒行為を認めることは当然である。しかし、尾行・張込みの対象者のプライバシー等の保障のためには、無条件にどうような尾行・張込みも許されるというわけではない。

ニ  特に、犯罪が未だ発生していない段階における尾行等については、犯罪発生後のそれと比べて一層の配慮が必要となることは、明らかである。例えば、対象者の異常な挙動等の事情等から合理的に判断して犯罪を犯そうとしている相当な理由があるような場合には、犯罪の予防・鎮圧とういう目的を達成するためにも、尾行の必要性・緊急性が高く、たとえば対象者の意思に反した尾行であっても相当と認められる場合があろうが、対象者が全く適法な行動に出ている場合にはその対象者の自由意思に影響を与え、その自由な行動を制約するような方法での尾行等は許されない。

三  犯罪捜査としての尾行・張込みは、任意捜査の一つとして刑訴法197条1項を根拠に認められる。規範も、任意捜査中に「捜査を行うに当たっては、聞込、尾行、張込等により、できる限り多くの捜査資料を入手できるように努めなければならない。」(規範101条)と規定している。社会通念上相当な範囲のものであり、対象者の意思を抑圧するようなものであってはならないことは当然である。



[警察官の対象者の意思に反する密着尾行が違法であるとされた事例~大阪高判昭51・8・30判時855号115頁]

(事実関係)
いわゆる釜が崎地区「共闘会議」メンバーの被告人らを尾行中に気付かれ、「帰れ」と言われた後も5名の警察官は却って前より間隔をつめて至近距離で尾行(密着尾行)した。

(判断)
犯罪発生前であっても、何らかの犯罪を犯そうとしているとの合理的な疑いがある場合は、対象者の意思に反しても尾行を継続し得るが、本件のようにその必要性がないのに、対象者に気付かれた後も密着尾行する行為は、実質的な強制手段とは到底認め難く、違法である。

(実務上の留意点)
結論には異論もあるが、犯罪予防のための公然尾行を認め得ることが前提となっている。実務上は、社会通念上行き過ぎと評価されない限度にとどめるように留意すべきである。

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警察法
(警察の責務)第2条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。


刑事訴訟法
第197条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。


犯罪捜査規範
第四章 任意捜査
(任意捜査の原則)
第九十九条  捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。

(承諾を求める際の注意)
第百条  任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度もしくは方法をとらないこと。
二  任意性を疑われることのないように、必要な配意をすること。

(聞込その他の内偵)
第百一条  捜査を行うに当つては、聞込、尾行、密行、張込等により、できる限り多くの捜査資料を入手するように努めなければならない。
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by shikishima2600 | 2010-01-09 01:05